
終戦記念日のある8月
映画『医の倫理と戦争』という
ドキュメンタリーを
観に行きました
観終えた時の
私の率直な感覚は
「戦争に最も近いといえる
現代の日本人は
医療者なのかもしれない」
ということと
「ベトナム戦争に参戦しても
命を殺めなかった
牧師先生(鄭明析牧師)は
一体どれだけの信念の強さを
持っていたのだろう」
ということでした
その二つのことを軸に
ブログをまとめてみました
『731部隊』とは?

この映画は
『731部隊』の話を軸にしながら
現代の医療現場で起こっていることとの
繋がりを切り出している構成に
なっています
731部隊とは
第二次世界大戦中に満州で結成された
主に医療従事者によって構成された部隊です
この作品を見て
一番私が衝撃を受けたのは
731部隊の医療者たちが
中国人やロシア人を「丸太」と呼び
人体実験の材料として
非人道的に扱ってきたこと
そして
その歴史が国レベルで隠蔽され
人体実験の結果が後に
ベトナム戦争や朝鮮戦争、
関わった医療者の発表した論文、
そして私達の享受している医療の現場にも
活かされて続けられていた——
ということでした
…正直
私はこの歴史的事実を
看護学生時代には勿論
この映画を観るまで
一度も聞いたことがありませんでした
このような話を聞くと
「それって本当に事実なの?」
「陰謀論のような話なんじゃない?」と
あまりの重さに考えてしまう方も
いらっしゃるのではないかなと思います
映画の構成としては
当時の記録や元隊員の残した書籍、
731部隊への有識者や
現在医療の最前線で活躍する
医師や関係者へのインタビューが
主な構成要素となっていました
- 「医の倫理を問う」秋元寿恵夫
-
元731部隊員であり臨時嘱託の血清学者が、深い罪の意識を背負って生きてきた自分史を語りながら、戦争と癒着した医学研究の恐しさを告発し、医の倫理とは何かを問うている本
- 「七三一部隊と大学」吉中丈志
-
京都大学医学部臨床教授である医師の著者が、大学所蔵資料や米軍の記録から、巻き込まれただけではない組織の姿を浮き彫りにし、歴史と倫理に向き合う意味を問うている本
- 「悪魔の飽食」森村誠一
-
731部隊の実像に迫ったドキュメント
今回は
731部隊の行なった
詳しい内容には
深く触れないでおこうと思います
というのも
私がこの映画を見て一番衝撃を受けたのは
「731部隊がどれだけひどいことをしたか」
という部分そのものよりも
そこに関わっていた人たちが
私たちと何ら変わりのない
ごく普通の人たちだった
という事実だったからです
過去
この映画を見に来ていた方の中に
「自分は731部隊で
人体実験を行っていた父親のもとに
生まれ育った」という方が
いらっしゃったそうです
その方が父親について
どんな人だったかを尋ねた時
「悪人だった」という話は無く
普通に「仕事に行ってくる」と言って出かけ
帰ってきたら家族と団らんし
愛情を感じられる
ごく普通の父親だったそうです
それでもやられていたことは
殺人であり
非人道的な人体実験を繰り返すことでした
この作品の監督さんは
「戦争というのは生きるか死ぬかという
極限状態だからこそ
人は非人道的なことが
できてしまうのではないか」
と考えていたそうです
でも
実際は違いました
人は
命の危機を感じることがほとんどない状況でも
これだけのことができてしまう
ということを
731部隊の過去を知った時に
感じざるを得ませんでした
「権威バイアス」と 誰でもなり得る怖さ

ここで私が強く感じたのは
『権威バイアス』というものの怖さでした
社会心理学の実験に
「ミルグラム実験」というものがあります
被験者に
指示に従って隣の部屋の人(サクラ)に
電流を流すよう求める実験です
電流を受ける側(サクラ)は
痛みを訴えて叫びますが
指示を出す側が「大丈夫」と言うことで
被験者は電圧をどんどん上げていってしまい
最終的には
命に関わるレベルの450Vの電流を
流すことができてしまった人が
65%も居た という結果になりました
つまり
「指示だから」
「上がそう言うから」
「病院の方針だから」
という理由づけがあれば
人はどこまでも合理化し
非人道的な行動ができてしまう…
つまり
731部隊の医療者たちも
決して特別な悪人だったわけではなく
強い信念や思想
パッションと言えるものを
自分の中に持っていなかったからこそ
その流れに飲まれてしまったんじゃないかと
私は思いました
…私は
「これは他人事ではない」と思いました
私自身
「病院の方針がこうだから」
「医師がそういう方針を出したから」と
なんとなく合理化して動いてしまったことが
正直あったと思います
そう感じた私が
より一層恐ろしさを感じた部分がありました
それが作中でも紹介されていた
自衛隊法です
自衛隊法の第103条第2項には
以下の内容が描かれています
第七十六条第一項の規定により自衛隊が出動を命ぜられた場合においては、当該自衛隊の行動に係る地域以外の地域においても、都道府県知事は、長官又は政令で定める者の要請に基づき、自衛隊の任務遂行上特に必要があると認めるときは、内閣総理大臣が告示して定めた地域内に限り、施設の管理、土地等の使用若しくは物資の収用を行い、又は取扱物資の保管命令を発し、また、当該地域内にある医療、土木建築工事又は輸送を業とする者に対して、当該地域内においてこれらの者が現に従事している医療、土木建築工事又は輸送の業務と同種の業務で長官又は政令で定める者が指定したものに従事することを命ずることができる。
防衛省・自衛隊:自衛隊法より
つまり有事の際に
医療従事者や土木、輸送業者が
有事に徴用されてしまう
という意味合いです
…この事実を
私は今まで全く知らずに
医療者として働いていました
そして
このことを知った時
とても背筋が冷たくなるような
感覚がありました
…今も弾道ミサイルが
時折飛んでくる日本で
もし本当に有事が起きたら
私も現場に駆り出され
権威や命令のもとで動かざるを得ない状況に
置かれるかもしれない…
そうなったとき
強い思想や信念を
自分の中に持っていない限り
私たちはきっと誰でも
あの時代のあの人たちと
同じことをしてしまうのではないか…?
今回この映画を見て
このことが一番恐ろしく感じました
だからこそ思い出した牧師先生のこと

そんなことを考えていたときに
私の頭に浮かんだのが
私の教会の牧師先生である
鄭明析(チョンミョンソク)牧師のことでした
牧師先生は韓国の方で
20歳前後の頃
実際にベトナム戦争に2回派兵されています
731部隊よりもさらに命の危機が迫る
生きるか死ぬかという戦場のど真ん中です
その状況の中で
彼はクリスチャンとして
「絶対に人を殺したくない」
という思いを貫きました
突撃のような場面でも
上に向かって撃つ
人がいない方向へ撃つ
というふうにして
自分自身は誰も殺さなかったそうです
牧師先生の著書の推薦文として
当時の上官の方は
鄭明析戦友は
「敵を殺すからといって、
戦闘で勝利するのではありません。
敵の命までも愛してあげられる心を
持つ時に真の平和が来ます」
と答えた。
-小隊長(予備役大佐)チェ・ヒナムの推薦文より- 引用:鄭明析「戦争は残忍だった 愛と平和だ」1巻
と述べています
この上官は帰国後に
鄭明析牧師を題材とした
『ベトナムの戦場で出会った神様の人』
(2010年、タビッ出版社)
という本も執筆しています

牧師先生は
敵と銃を構え合うような
まさに相打ちになりかねない状況でさえ
銃を捨てて
相手を抱きしめに行くことが
できた人でした
…これがどれだけすごいことか
映画を観て改めて感じさせられました…
731部隊の人たちは
命の危機がほとんどないのに
権威に従って人を傷つけることを
選んでしまった——
一方で牧師先生は
自分の命が脅かされる極限状態の中でさえ
「人を殺さない」
という自分の信念を貫き通した
同じ「戦争」という状況でも
そこにどれだけ
強い信念と確信を持っているかで
行動はまったく違うものになる
この対比を思ったとき
私は鳥肌が立つくらいの衝撃を受けました
牧師先生は
今はもう80代になりますが
その頃から変わらず
「命を愛することが大切だ」というメッセージを
御言葉として毎週水曜日と日曜日に合わせて
様々な形でほぼ毎日
私達会員に送ってきてくれています
そのようなことができるのは
あのベトナム戦争の最前線で
命の危険にさらされながらも
自分の想いを曲げずに行動できる程の
強い信念と確信があるからこそ
なんだと思いました
今の私達が日々すべきこと

731部隊の話を聞くと
「そんな酷いことをする人がいたんだ」
で終わらせてしまいがちです
でも本当は
「強い信念や思想を持っていなければ
私たちは誰でも同じことをしてしまう」
という方が
正しい受け止め方なのではないかと思います
そして
その裏返しとして
牧師先生のように
本当に極限の状況であっても
自分の信念を貫ける人がいる
という事実は
私にとって大きな希望でもあります
…作品の中で
ある内科医の方が
このような趣旨のことを
話されていました
「自分がされたら嫌なことを人にしない」
という日々を積み重ねられない限り
戦争は無くならない
…とても心に刺さりました
私を含めた
現代の医療者は
「こんな治療はされなくないな」
「こんな関わりはされたくないな」
「こんな看護はされたくないな」と
日々欠かすことなく考えて
医療を実践しているでしょうか…?
権威バイアスに流されずに
『命を愛する』という思想を
日々の生活の中でどれだけ
本気で積み重ねているでしょうか…?
私は
牧師先生の姿を思い出しながら
まだまだ自分には
その思いが足りないなと
感じざるを得ません
だからこそ
少しずつでもこの
『命を愛する』という思想を
牧師先生のように
生活の中で実践していきたい
そして
一人一人がそのように生きることが
本当の意味で
『平和のために生きる』ことに
なるのではないかと
感じました
この映画は
常時上映されているものではなく
いくつかの映画館で
不定期に上映されています
ご興味のある方は
以下のサイトをご参照ください*



